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医療施設や介護施設などで絶対に必要なものといえば、毎日の食事。今回は、病院給食にスポットを当てた記事をお届けします。現在は調理師や管理栄養士などの人材不足、食材をはじめとするさまざまなコスト高騰に伴い、委託費の値上がりも懸念されています。そんな問題が浮上してきている中で、病院給食はどのように運営されているのでしょうか?


本記事では病院給食の現状について触れ、委託と直営それぞれのメリットやデメリットを解説。さらに、病院給食を効率よく運営するためのポイントやおすすめの調理・提供方法などをお伝えします。

病院給食は委託と直営どちらの割合が多いか?

まず、病院給食の現状について詳しく見てみましょう。病院給食の基本的な運営方法は委託と直営の2パターンがあります。どちらか一方だけでなく、併用しているところもあるでしょう。給食を調理する場所は、委託も直営も病院内・病院外の2つに分かれます。

2021年10月に発表された研究では、病院給食の運営について約2,000施設(病床規模:50床未満〜500床以上)を調査。規模にかかわらず、最も多い運営形式は委託+院内調理となっています。次いで多いのは、その半数ほどにあたる直営+院内調理です。

これに加えて注目すべき点は、給食の調理・提供方法。運営方法と同様に施設の規模を問わず、調理後そのまま提供するクックサーブという形式が主体となっています。

続いて、病院給食の運営方法について、委託と直営のメリットやデメリットを見ていきましょう。

給食委託が抱える問題

給食委託は文字通り、病院外の企業に給食業務を委ねる運営方法です。病院側として最大のメリットは、調理師や管理栄養士など、給食を提供するための専門スタッフを確保する必要がないことでしょう。たとえ委託費の値上がりがあったとしても、慢性的な人材不足やスタッフの育成・管理などで悩まされることはありません。

病院内のスタッフは自分たちの専門職に特化したまま、業務を円滑に進められるのです。

また、委託先の専門的なノウハウによって食の安全性が維持しやすくなるほか、幅広い食事が提供でき、有事の際にも対応しやすくなるメリットがあります。入院患者の安心感に大きく貢献することになるので、病院としてのホスピタリティも向上するでしょう。

ところが、委託による運営方法にはデメリットが3つあります。

委託の問題①委託先との連携が難しいこともある

病院外の企業に委託するということは、本来であれば密なコミュニケーションが必要です。とはいえ、双方が無限に時間を費やせるわけではありません。打ち合わせのためにスケジュールを無理に調整しなくてはならない、担当者とすぐ連絡が取れないといった問題が生じることも考えられます。連携がうまくいかず、委託先との信頼関係が浅くなってしまうかもしれません。

委託の問題②委託先の状況次第によるところがある

給食業務にあたるスタッフは病院外の人です。採用から育成まで委託先の企業で行ってもらえる反面、入れ替わりが激しかったり、人員確保が不十分だったりすると、給食の品質維持にも影響を与えます。コストをかけても、委託先の状況によっては味やクオリティが不安定になったり、献立がマンネリ化したりする可能性は否めません。

委託の問題③入院患者の健康状態が把握しにくくなる

給食業務をすべて委託すれば、病院内のスタッフと入院患者がコミュニケーションをとる機会がぐんと減ってしまいます。しかし、毎日の食事の様子や健康状態によっては個別で対応すべき場合もあるかもしれません。委託にすることでそういった細やかな発見が遅れたり、必要に応じた献立の変更ができなくなったりする可能性があります。

給食直営が抱える問題

給食直営は、病院内ですべて完結させる運営方法です。調理師や栄養管理士などのスタッフを直接雇用するため、就業環境を整えれば長期で働いてもらえる可能性が高く、コストに見合った業務が行えるようになります。

また、入院患者とコミュニケーションをとる機会が多くなり、ちょっとした変化や要望にも気づきやすくなるのも大きなメリット。給食の品質が安定するだけでなく、個人の健康状態に合わせた献立を用意することも可能です。その結果として、入院患者の満足度もアップするでしょう。

しかし、委託と同様、直営による運営方法にも以下のようなデメリットがあります。

直営の問題①病院内の業務量が増える

病院内のスタッフが給食を提供するのであれば、やはり業務量の増加は避けられません。スタッフの採用や育成、管理も必要になるため、コア業務が滞ってしまう可能性は高くなります。

その場合、病院としての評価が下がるかもしれません。

直営の問題②人材不足になると品質維持が難しい

調理師や栄養管理士など、業務に必要な人材が足りなくなると、給食の品質が落ちてしまう恐れが高まります。

余裕がないまま業務を行うと、配膳が大幅に遅れたり、個別での対応ができなくなったりする可能性もあるのです。

 

病院給食の効率化のために必要なポイント

では、病院給食の運営について効率アップするためのポイントをまとめてみましょう。

効率化のポイント①調理時間と工程、動線の見直し

提供している献立の調理時間と工程を細かく見直し、コストとのバランスがとれているか確認します。また、調理場や配膳ルートの動線がスムーズかどうかも大事なポイントです。

効率化のポイント②個包装や常温保存の食材を活用

パンやチーズ、ヨーグルトなど、個包装になっている食材を取り入れると、調理時間と工程が大幅に削減でき、食後の片付けも少なくなります。常温保存が可能であれば、提供しやすさにもつながります。

効率化のポイント③AIシステムやIoTを導入

献立の考案や食材管理などの業務、そのほかの事務作業にAIシステムを導入。管理栄養士や事務スタッフの業務負担を軽くすることができます。さらにIoTを導入すると、調理場などの動きをまとめて把握できるようになります。

効率化のポイント④調理・提供方法の見直し

現状で多く採用されているのはクックサーブ形式ですが、それ以外の調理・提供方法を採用するのも効果的です。調理済みの食材を保存し、提供時に再加熱するクックチルシステムなど、さまざまな選択肢があります。単体での活用でも併用でも、施設の規模や業務の流れに合わせた方法を選ぶことができます。

病院給食の課題を解決するクックチルとは

最後に、病院給食の効率化に役立つクックチルについてお伝えします。クックチルは、効率化のポイント④で例に挙げた効率化のために欠かせない調理方法のひとつ。下処理した食材を加熱調理し、菌の繁殖を抑えるために急速冷却するのが特徴です。完成した料理は適温で冷蔵保管し、再加熱してから提供します。

クックチルの導入は、衛生面で安全性が確保できるのはもちろん、調理時間や工程の削減にも有効。業務をより計画的に進めて、人件費も抑えられます。さらに、事前に調理して冷蔵保存するため、結果的に食品ロスを減らすことにもなるのです。つまり、委託と直営、両方のデメリットをカバーできる方法といえるでしょう。

まとめ

病院給食について詳しくお届けしましたが、いかがでしたか? 昨今では委託費の値上がりが懸念されていますが、委託と直営のどちらにもメリットとデメリットがあることをご理解いただけたかと思います。ナリコマグループでは、クックチルを活用した献立をご提案。

調理師や栄養管理士などのスタッフが働きやすく、入院患者の満足度も向上できるような環境づくりにぜひお役立てください。

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