近年、病院や介護施設の厨房の人手不足が深刻になっています。原因は複雑で、社会情勢も影響しているため簡単には解決が難しい状況です。そこで、厨房の人手不足の解決策として「機械化」が注目されるようになりました。この記事では、厨房の人手不足の原因から、厨房の機械化のポイント、人手不足を助けるニュークックチルの概要を解説します。
目次
厨房の人手不足が深刻化する原因
近年、病院や介護施設、その他の食事を提供する施設を含めて、厨房の人手不足は深刻化しています。原因には、調理師の業務自体や施設の経営状態など、さまざまな事柄が影響しているため、容易に解決が難しい状況となっています。
調理師の減少
厨房の人手不足は、病院や介護施設だけでなく、宿泊施設や飲食店などでも同様です。厨房で働く人がいない直接的な原因としては、調理師が減少していることも影響しています。近年、調理師免許を取得する人が減ってきているといわれますが、その原因として、得られる収入が低いことや過酷な業務内容などが挙げられています。
調理師免許を取得しなくても、調理補助として調理の業務に就くことはできますが、仕事環境のデメリットは調理師の場合と共通しています。調理の業務に就くことで調理師免許の受験資格が得られることは、調理補助として働くやりがいの一つですが、そもそも調理師を目指していなければモチベーションにもつながりません。調理師の数が減ってきていることは、こうした調理師として働くことのモチベーション低下もうかがい知ることができます。
過酷な厨房業務
厨房の業務が大変だといわれる理由には、下記のような内容があります。
- 長時間勤務
- 立ち仕事が多い
- 限られた時間での調理
- 厳しい衛生基準
病院や介護施設では3食の食事が提供されるため、厨房では食事のタイミングにあわせて準備しなければいけません。そのため、朝8時の朝食を提供するためには、早朝の4時頃に出勤しなければいけないことがあります。また調理は作って終わりではなく、最後の後片付けまで行うため、夕食を作った後はその作業となり、勤務終了は夜10時頃になってしまうでしょう。シフト制ではあっても、早番や遅番を選ぶことになり、生活時間に影響することがあります。
また、調理は立ち仕事が多いため、勤務時間に対応するだけでなく、仕事自体の体力も要求されます。このような中で、時間内に厳しい衛生基準をクリアした食事を作ることは、プレッシャーになってしまうこともあるようです。
高齢化がもたらす障害
社会的に人々の高齢化はさまざまな問題になっていますが、厨房においても影響をもたらしています。若い世代の厨房の勤務希望数が少ないことから、厨房のスタッフが徐々に高齢化してしまうことが現状の課題の一つです。スタッフの高齢化に伴い、厨房業務の効率が下がってしまい、元々比較的過酷な業務が年齢を重ねるごとにさらなる負担になってしまうこともあるでしょう。
また、病院や介護施設においては、患者さまや利用者さまの高齢化によって、介護食の提供内容が複雑になり、対応が必要な内容が増えることも業務負担につながります。こうして職場環境に負担が増えつつあることも、新しい勤務希望者の意欲減退や離職希望につながり、人手不足に影響する原因の一つです。
人件費の高騰と人手不足がさらに現状を悪化
厨房の人手不足には、そもそも雇う予算が厳しい場合もあります。近年、人件費の高騰によって施設側に雇う余裕がないことも、厨房にとって大きな負担をもたらしています。今までの業務を少ない人材で行うと、一人の負担がより大きくなってしまうでしょう。その結果、離職率が上がれば、さらに人手不足となり、現状はより悪化してしまいます。
厨房の機械化を進めるポイント
厨房に人手が集まらない場合の解決策で役立つのが、厨房の機械化です。厨房の人手不足が深刻なため、いかに早く先端技術を取り入れて厨房業務を機械化するかが求められています。機械化の方法としては、厨房に役立つ機器を取り入れて調理を自動化させる方法や、セントラルキッチンに調理を委託して施設内の厨房業務自体を減らす方法などがあります。
ロボットの活用で調理を自動化させる
厨房の調理過程にロボットを活用することで、調理作業を自動化することができます。焼く、茹でる、揚げるなど、各工程に優れた機器はさまざまにあり、メニューを設定すれば自動で仕上げてくれるのが特徴です。調理工程に直接個人のスキルが影響しないため、調理スキルを問わず任せられるメリットもあります。
セントラルキッチンに調理を委託する
厨房の人手不足の解決策では、セントラルキッチンを利用するのも方法の一つです。セントラルキッチンで主な調理が行われるため、施設内の厨房では、再加熱や盛り付けなどの簡単な作業で食事を用意することができます。セントラルキッチンを持つ業者に調理自体を委託すれば、全体的な食事の用意を機械化することができるでしょう。
食事の準備を機械化できる?「ニュークックチル」とは
セントラルキッチンの調理方式には、クックチル・クックフリーズ・クックサーブ・真空調理がありますが、この中のクックチルを進化させたのがニュークックチルです。厨房の人手不足の解決策として、ニュークックチルは注目されています。
クックチルよりも機械化できるニュークックチル
クックチルのシステムでは、セントラルキッチンで加熱調理された食品を急速に冷却し、厨房まで届けます。厨房では、届いたクックチル食品を再加熱してから盛り付けて提供する手順です。クックチルの場合、食事のタイミングに合わせて、食品を温めて盛り付けを行う必要があります。
これに対して、ニュークックチルのシステムでは、再加熱機器を利用することで、食事の時間に合わせて温めることが可能です。クックチル食品を盛り付けてから機器の中にセットしておけば、自動で再加熱してくれるため、食事のタイミングでよりスムーズに提供できるでしょう。
ニュークックチルのメリットとデメリット
ニュークックチルは、クックチルのメリットにさらにメリットが加わり、より便利で省人化に役立つ方法です。しかし、導入におけるデメリットもあるため、双方を把握してバランス良く検討しましょう。
少人数で衛生的!ニュークックチルのメリット
クックチルの段階で、作業がマニュアル化できることや、調理の際の水道光熱費が削減できるといったメリットがありました。その反面、食事の提供ごとに温めて盛り付けるという作業が必要で、提供数が多いほど、食事が冷めてしまう、食べるまでに時間がかかってしまうというデメリットがありました。
ニュークックチルでは、あらかじめ盛り付けておき、食事時間に合わせて温められるため、前倒しの作業ができるようになったことがメリットです。提供数が多くても、温かい食事を含めそれぞれの料理を適温で提供できるようになりました。前倒しの作業ができるようになれば、早朝や遅番のシフトも不要になるでしょう。また、食事の準備を始めてから提供するまでの時間も短縮されるため、衛生面や安全面でもメリットになります。
導入環境の調整が必要!ニュークックチルのデメリット
メリットの多いニュークックチルですが、導入には「再加熱カート」や「リヒート」といった専用の機器が必要です。個々の機器によって機能が違い、移動できるものと据え置きの違いがあります。また、「再加熱カート」は、ある程度のサイズがあり一定のスペースが必要です。
ニュークックチルには、こういった機器の準備なども含めた初期コストがかかるほか、施設内でのスペース確保が必要になるデメリットがあります。そのため、コスト面も含めたニュークックチル導入における環境調整を考えたうえでの検討が大切です。ただし、初期コストは長期的に償却できる可能性があるため、ある程度長期目線での計画が役立つでしょう。
ナリコマのニュークックチルをご検討ください
厨房の人手不足は多くの病院や介護施設などを悩ませる深刻な問題ですが、新しい技術を上手に使うことでより効率的に改善することができます。ナリコマのニュークックチルもさまざまな施設さまにご利用いただいています。
ナリコマのクックチル食品は、身体機能に合わせた4形態で、介護食・医療食にも対応しています。対応エリアも幅広く、北海道と沖縄を除く全国でご利用できますので、ナリコマのニュークックチルをぜひ一度ご検討ください。
クックチル活用の
「直営支援型」は
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