ナリコマの社長対談 後編は、美夫氏、克成氏にDXとナリコマの未来について語っていただきました。対談中、もしナリコマにいなければどんな仕事に就いていたかという質問に対し「先生になっていたかも」(美夫氏)、「車関係の仕事をしていたかも」(克成氏)とお話しされた両者。変化の激しい今の時代に対して、それぞれどのような視点から見ているのでしょうか。気になるナリコマ社長対談 後編です。
前編はこちらからご覧ください。
ナリコマはデジタルをどう使っていくか
―ナリコマの歴史は、デジタルによって事業を構築してきたと言えます(美夫氏)
美夫:われわれの事業はシステム的な整備の過程でもありましたね。最初は取引施設ごとに献立を考え、発注作業も夜中まで行っていました。時間も労力もかかるなかで、これはなんとかしないといけないと思い、お客さまのご要望をまとめてモデル献立(統一献立)を立て何とか切り抜けていったんです。ただ、誰が調理してもクオリティーが一定のものを提供する場合、やはりデジタルで管理していかないと、なかなかね。一つの調理の工程できちんとルールを決め、そのルールで均一のものを提供することが大事です。そういう意味では、30年間、デジタルによって事業自体を構築していったとも言えます。
克成:変に危機感を煽るわけではないんですが、環境変化が激しい中で今のビジネスモデルが今まで通り続くのか。ナリコマは今順調に売上も伸びて、皆さんどこかで安心感を持っているように見えます。規模が大きくなるにつれ、デジタルマーケティングやDXなどで色々やっているのが一つの転換期になりつつあります。営業手法においても飛び込み営業からセミナー形式になって、セミナー形式からデジタルでできるようになったりとか、そういうところに現状維持ではダメだという危機感を持ってやっていかないといけない。自走できる人材、組織の必要性を感じてもらいたいと思っています。
美夫:そうですね。ナリコマにおいても引き続きデジタルによる事業構築をしっかりやっていくことの重要性を感じています。今までもやってきたし、これからさらに大事になります。人の記憶力に頼ることは難しいんですよね。おもえば、私は創業当時からいかにしてお客さまである施設や病院の食堂、厨房運営のスタッフの皆さん方の負担を軽くするにはどうしたらいいんだろうということをずっと考えてきているんです。この気持ちがDXにつながるきっかけなのではないでしょうか。
克成:今後、現場ではキャッチしづらいところをナリコマがサポートすることで施設運営の業務の効率化につながるんじゃないかと思います。そういう意味でもIT人材やデジタル人材が受け身ではなく提案をしていけるようにしていかないといけませんね。ナリコマはデジタル、IT、そこが強みだと思っていて、それが社内だけではなくお客さまにも寄与できると思っています。お食事サービスのソリューションに加え、施設運営自体もソリューションの余地がある。介護の直接的な業務に付随する事務的なことや、介護におけるロボティクスなどにおいても、ナリコマが提案できる情報を持つことが強みになります。
美夫:いずれにしても、デジタルの活用というのは必要不可欠で、情報の共有も必要でしょう。さまざまな意見を集約しながら、一つの方向を見つけ出し共有していく。このことは企業経営にとって重要なことだし、さらには人間社会の発展のためにもなるでしょう。たとえば、情報共有によってお客さまのご意見をリアルタイムで受け付けて、スピーディーな反応、対応を行う。そうすると企業の活性化にもつながりますよね。
克成:ただの給食屋さんで終わらずに、そのほかのサービスや人材サービスでサポートすることで今までの給食屋さんのビジネスモデルを変えていくということ。創唱者じゃないですけれどそういうこともやっていくことが、ナリコマの価値を上げていくこと、ひいてはナリコマの従業員が自分の価値を上げることにつながるのではないでしょうか。「自分だったらこういう提案ができます」「現場とコミュニケーションを取り、寄り添った提案ができます」など、システムにおいても現場を見て提案していけるような人材をもっと増やしていけたらいいですね。この先、ロボットができないことをやっていかないといけないし、施設のお食事サービスだけではなく、付随する施設運営のソリューションができるようにしていく。そんな時代がきていると考えています。
美夫:システム面でのソリューション、おもしろい発想ですね。克成くん、良いこと言うなあ。われわれのお客さまは介護施設、病院、それぞれが共通した問題や悩みをお持ちだと思うんです。外部の会社に依頼して独自のシステムを作っていらっしゃるところがあっても、やっぱり細かいところはなかなか管理できないのが現実だと思うんだよね。何百社、何千社のお客さまに共通する課題や悩みについて、ナリコマのスタッフがサポートをして共に解決していければいいなと思っています。そういう意味でも、デジタルで事業をどんどんパワーアップしていくことが重要でしょう。スタッフを増員して強化して能力アップをする。お客さまのお困りごとにしっかり対応していったら、さらにナリコマは成長できるし、給食屋さんというだけではなくなります。
克成:そうなんです。やっぱり人と人なのでデジタル化で全てがパーフェクトにできるというわけではなく、リアルとデジタルをミックスしながらも絶対にどこかでリアルの接点は残るんじゃないでしょうか。私は「知識×行動」だと思っています。知識があっても行動がゼロだったら全く意味がないし、逆に行動が100でも知識がゼロだったら全く意味がありません。受け身ではなくもっと現場を知ることは大事で、それは別にシステムに限った話ではないんですよね。商品企画であればお客さまのところへ行ってリアルな声を聞くことが大事だと思うし、間接的な情報はそれが本当に正しいのかということも、自分で行って確かめることが必要だと思います。デジタル化が進んでも、足を運ぶといった泥臭いところは今後も残っていくでしょうね。
未来の可能性と組織の変化について
―色々な可能性を排除せず、柔軟な組織にしていきたい(克成氏)
美夫:ナリコマが変わるというよりも、もっと進化していかないといけないことはありますね。おそらく時代の潮流と共に変わり続けないといけないですし、変わらないということ自体、淘汰されていきますので。色々お客さまの声も聞きながら、世界の情勢も見ながら考えていくべき問題なんでしょうね。ここは克成さんの意見を聞きましょうか。
克成:他社もすごく危惧されていると思うんですけれども、今は今までの当たり前が当たり前ではなくなる時代だと思っています。それを見越して先手で色々やっていかないと、人材不足も今後ますます増えていくだろうし、それにともない工場自動化やDXが進むでしょう。今需要があるところがちょっとした変化で需要が少なくなることもありえます。そういうのは私の中ではすごく気にしていますね。この先、日本の法人において外国人の受け入れが進んでいきます。これはまだ先の読める未来です。ただ、人材不足の解決策によって今の日本のビジネスモデルも変わってきたり、外国人が増えていくにしたがって食のあり方も変わってきたりとか。それらの変化が、テクノロジーの進化によりすごいスピードでできる時代になってくると思っています。
美夫:さきほどのDXの話にもつながりますね。ナリコマでのシステム整備の過程が、今後は世の中でも起こっていくと。
克成:本当にどこの業界も人材不足は付き物です。さらに、地方に行けば行くほど深刻さは増します。その中で、今のナリコマの商品のサービスのパッケージングやビジネスモデルが5年後、10年後に通用するのかというと、私はそうではないと思っているので。それこそ会長が言われた先見性というか先を読む力というのは、その時代にあった組織を作っていくことに直結することです。組織の柔軟性と言うのでしょうか。一年前の組織が次の年にはガラッと変わっているような変化も考えられる時代だからこそ、柔軟性はつけていきたいなと思います。
美夫:そうですね。克成さんは、柔軟性を体現するにあたり、大切にしている考えなどはありますか?
克成:私は「色々な可能性を排除しない」という考えを大事にしています。働き方においても、会社に属する働き方が当たり前の時代ではなくなっているので、ナリコマも柔軟にしていかないといけません。ナリコマとしても色々な方にジョインしてもらって、お互いにとって良い形ができていくことで互いの成長力にもつながっていきます。時代の変化に対応していくためには必要な変化ではないでしょうか。「これはこう」と自分の中でシャッターをつくり、それ以外を締め出すと、その時点で可能性を塞ぐことになりますよね。極力そういう気持ちを持たない、これはぜひ皆さんに伝えたいことです。
美夫:なるほど、シャッターを取っ払う。ナリコマの未来にもつながっていくという考えですね。
克成:はい。さらに、この先高齢化がさらに進んでいく中で現行のサービスや仕組みが海外へ少しでも寄与できるのであれば、それはありだと思っています。どういう形かはわからな いですけれども、目を向けていきたいですね。今後、海外でも高齢化は進んでいきますので、ナリコマの仕組みを海外に持っていって、より効率的に現地でのお食事作りや介護のサービスなどに応用できるのではないかと。今は海外に進出している介護事業者もあるので、その辺と連携しながらなどといったさまざまな可能性について考えています。